毎週1回行われる会議で「研究開発会議」というのがあります。今日もその会議に出席していました。およそ5年間こだわり続けてきた事がいよいよ実現して、今年の春から製品化が決定しました。物(商品)を作るのは、言い換えると「どこで妥協するか」って事だと思ってます。
「志」を持って作られたものは、手にした人にメッセージを伝えてくる。初めてポルシェに乗ったときに強烈なメッセージを感じました。作った人達がこめた思いとこだわり。
ポルシェという車の一般なイメージはブランド力で売れているだけで、すぐに壊れて、維持費が高くて、燃費が悪くて、見栄を張る実用にならない車。
自分で乗るまでは私もそう思っていました。でも実際は全然壊れないし、燃費だって国産車と変わらない・・いやむしろ良いくらい。それどころか車としての価値感がそれまでのどの車ともまるで違っていた。本当にまったく違った。その衝撃たるや・・・雷に打たれた感覚でした。
それはたとえ40kmで走っていたとしても、ポルシェ社のメッセージをドライバーに伝えてきます。(残念ながら助手席には伝えてきません(^_^;))
EOS 20D
車の運転を楽しむ人間(別に飛ばすってことだけではありません)が、何を望み、どうしたいかって事を、この車を作っている人達は全部知っていて、だからこう作ったんだって・・わかるんです。まるで先回りされているかのよう。
このポルシェを作った人達の志と、それを製品として世の中に出した会社に敬意を表したいと感じました。
この体験はその後の自分の仕事に対する姿勢に大きな影響を与えてくれました。理想をどこまで捨てずにいられるか=どこで妥協するか。
今回製品化される物も、当初コンセプトを持ってあちこちの研究機関に相談に行っても、「そんなこと出来るわけが無い」とか「そんなのが出来るくらいなら大手がとっくにやっている」と全く相手にすらしてもらえませんでした。
それでも「それが出来たら素晴らしい事」は誰の目からも明らかなので、粘りに粘って、ようやく「そんなに言うなら・・・やってみましょうか」と口説き落としました。で・・・3年位した頃、ブレイクスルーが起きました。相手の研究員の方が私にくれた年賀状に「最初から常識的に無理に決まっていると思っていましたが、おかげさまで自分でも驚くような糸口を見つけることが出来ました。これは自分の人生にとって忘れられない教訓になりました」と書いてくださいました(^_^)
そのブレイクスルーから更に2年をかけて、まもなくその製品が世に出ることになります。「あきらめないこと、こだわり続けること」それを教えてくれたのは私にとってはポルシェだったのでした。
誰かの真似ではなく、志を持った人に作り出されたものは手にした人にメッセージを送ってくる。最近手にしたGR DIGITALⅡもMacも作り手のこだわりを随所に感じます。そんな「物」達からのメッセージが聞こえると、自分も姿勢を正さなきゃ・・って思うのです。